
スポーツスポンサーシップは、もはや単なるロゴ掲示や選手への商品提供にとどまりません。現代では、デジタルメディアを駆使した革新的なアクティベーション戦略が、スポンサーシップの成功を大きく左右する要因となっています。
この記事では、デジタルメディアを活用したアクティベーションに焦点を当て、その多様な手法と可能性を探ります。
デジタルを活用したアクティベーションの可能性
デジタルメディアは、魅力的で使いやすいツールとして、スポンサーシップ・アクティベーションに新たな可能性をもたらします。スマートフォン、アプリ、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、ポッドキャストなど、その種類は多岐にわたります。
重要なのは、これらのデジタルデバイスをいかに創造的に活用するかという点にあります。技術の進化は目まぐるしく、常に新しいデバイスやプラットフォームが登場するため、最新動向を把握し、柔軟に対応することが求められます。
デジタルメディアを活用したアクティベーションにおいて、スポンサーに求められるのは、制約のない創造性と豊かな想像力です。
具体的なアクティベーション事例
それでは具体的な事例として、以下AR(拡張現実)、VR(仮想現実)の具体例を紹介します。
1. 拡張現実(AR)の活用
コカ・コーラは、2018 FIFAワールドカップへの継続的なサポートを記念して、拡張現実(AR)体験を提供しました。この体験では、サッカーファンはスイス代表のスター選手、ジェルダン・シャキリ選手と一緒にプレイできるという、またとない機会を得られました。
チューリッヒ中央駅では、このAR体験のために特別な機材が設置されました。事前にグリーンスクリーンで撮影されたシャキリ選手の映像は、参加者が彼と一緒にプレイできるように編集されました。
参加者はまずシャキリ選手の高度なテクニックを観戦し、その後彼とシュート対決をすることになります。体験の最後には写真撮影が促され、撮影した写真とFIFAワールドカップ公式試合球が当たるチャンスに応募することができました。
このAR体験には、2日間で1,000人以上が参加しました(実施期間は1週間)。コカ・コーラのブランドアンバサダーは、参加者にコカ・コーラ製品を配布しました。
2. 仮想現実(VR)の活用
VRスポーツ観戦の最先端事例として、Meta QuestとNBAの取り組みが挙げられます。Meta Questは、Meta社が開発・販売するVRヘッドセットです。これを装着することで、ファンはまるでコートサイドにいるかのような臨場感でNBAの試合を観戦できます。
Meta QuestでNBAの試合を観戦する場合、180度VRで配信される52試合ものゲームを楽しむことができます。コートサイドの熱気や選手の息遣いまで感じられるほどの臨場感は、ファンにとってこの上ない魅力です。
試合後24時間以内には、見逃した試合やもう一度見たい名シーンを臨場感たっぷりのハイライト映像でチェックすることもできます。さらに、VR空間では、ミニゲームをプレイしたり、友達と交流したりすることも可能です。アバター用のユニークな報酬やグッズも用意されているので、自分だけのスタイルでNBAの世界を満喫できます。
Meta QuestとNBAの取り組みは、VRスポーツ観戦の可能性を示す好例です。VR技術は、スポーツ観戦の未来を大きく変える可能性を秘めていると言えるでしょう。
デジタルアクティベーションの重要性
デジタルアクティベーションは、特定のスポンサーのターゲット市場に到達するための独自のルートを提供します。この手法を適切に活用することで、スポンサーとターゲットオーディエンス間の結びつきを強化し、効果的なマーケティング活動を実現できます。
Webを活用したアクティベーション
Webを活用したアクティベーションは、ブランドとスポーツプロパティ間のつながりを、楽しさと魅力を兼ね備えた形で強化することを目的としています。これらはしばしば創造的で革新的なアプローチを特徴とし、以下の2つの方法を含みます。
1. スポンサーとプロパティのWebサイトのリンク
多くのスポンサーシップパッケージには、スポンサーとプロパティのWebサイト間の連携が含まれています。これは、スポーツプロパティのWebサイト訪問者が、ハイパーリンクされたロゴをクリックすることで、スポンサーのWebサイトへ移動できるというものです。理想的には、スポンサーのWebサイトからも同様に、スポーツプロパティのWebサイトへのリンクが提供されることが望ましいでしょう。これによって得られるメリットですが、相互送客によるアクセス数の増加、検索エンジン評価の向上、ブランド認知度向上と信頼性の向上などが上げられます。
2. スポンサーシップに関連するWebベースの活動
プロパティに関心のある消費者とのエンゲージメントを支援するために、プロパティテーマのWebサイトが活用されます。これらは独立したWebサイトとして存在する場合もあれば、、Webサイトの一部セクションとして存在する場合もあります。これらのアクティベーションは、ボストンマラソンのような年次イベントや、ワールドカップやオリンピックのような定期的なイベントでより一般的です。このようなアクティベーションは希少ですが、効果的に実施されると、スポンサーとスポーツプロパティの双方に利益をもたらすインパクトのあるメッセージを伝えることができます。
自動車メーカーのトヨタ自動車が、知的障がい者の競技会であるSpecial Olympicsのプロジェクトの取り組みを発信するために立ち上げたWebページは企業ブランディング向上に貢献する事例となっています。
ソーシャルメディアを活用したアクティベーション
ソーシャルメディアは、スポーツビジネスにおいて、スポンサーがファンと直接コミュニケーションを取るための最も強力なツールの1つです。その魅力は、情報発信の速さ、手軽さ、リアルタイム性、双方向性、そして多くの人が集まる公共の場としての機能を持つことです。
さらに、ソーシャルメディアは、共通の趣味や情熱、応援するチームへの熱意を持つ人々が集まる場所でもあります。特定のスポーツに関心を持つ多くの人々がプラットフォームに集まり、コミュニティを形成しています。
スポンサーは、スポーツチームのソーシャルメディアを活用することで、チームに関心を持つ人々に直接アプローチできます。チームのソーシャルメディアをフォローしているファンだけでなく、有料広告などを利用することで、これまで接点のなかった層にも情報を届けられます。
つまり、チームはスポンサーが目標を達成できるよう、自身のソーシャルメディアプラットフォームを最大限に活用する役割を担っています。ソーシャルメディアは、ファン参加型で協力的なメディアです。スポンサーはチームのフォロワー(ファン)と直接コミュニケーションを取ることができます。
これにより、ブランドとチームを結びつけ、ファンを巻き込むことができます。例えば、親しみやすい言葉遣いやユーモアを交えたやり取りを通じて、ブランドを人間味豊かに表現し、チームの個性に合わせた情報発信をすることができます。ファンと直接コミュニケーションを取ることで、彼らとの良好な関係を築き、維持する機会が生まれます。
スポンサーをPRするための魅力的なコンテンツ作成も重要です。例えば、よく考えられたデザインや動画などが効果的です。これらのコンテンツはファンと自然に繋がり、「いいね!」や「フォロー」、「コメント」、「シェア」といった行動を促すことができます。
また、「カートに追加」、「ウィッシュリストに追加」、「クーポンをダウンロード」といった購入を促すためのリンク付きコンテンツも有効です。さらに、ハッシュタグの活用、キャンペーンメッセージの発信、イベント参加者への情報発信なども、ソーシャルメディア戦略として重要です。
イベント参加者に自社製品やサービスに関する30秒体験談動画を作成してもらったり、フォトコンテストを実施するなども、ファンとの絆を深めるための有効な手段です。
スポンサーシップ活動を成功させるためのヒント
スポンサーシップ活動は、ブランドにとってその効果を最大限に引き出すための様々な選択肢を提供します。一般的に、ブランド(およびその代理店)は、各活動手法を組み合わせて活用することを強くお勧めします。そうすることで、スポンサーは多様な目標を達成し、スポンサーシップごとに異なるターゲット層にリーチすることができます。
効果的な活動方法と戦略を組み合わせるだけでなく、スポーツプロパティ、代理店、スポンサーといったスポンサーシップ契約に関わるすべての関係者は、契約締結後およびスポンサーシップパッケージ合意後も定期的に連絡を取り合うことが推奨されます。この過程では、様々な活動計画の立案、実行、進捗確認について話し合います。これにより、関係者間の信頼が築かれ、スポンサーシップの成功(すなわち目標達成)の可能性が高まり、再契約につながる可能性も高まります。
まとめ
デジタルメディアを活用したスポンサーシップ・アクティベーションは、今日のスポーツスポンサーシップにおいて不可欠な戦略となっています。AR、VR、アプリ、ソーシャルメディアなど、多種多様なデジタルツールを効果的に活用することで、スポンサーはターゲットオーディエンスとのエンゲージメントを深化させ、より効率的かつ効果的なマーケティング活動を展開することができます。
テクノロジーの進化は目覚ましく、デジタルアクティベーションの可能性は日々拡大しています。ブランドとプロパティは、この新たな潮流を理解し、積極的に活用していくことで、競争優位性を確立し、より大きな成果を上げることが期待できます。デジタルメディアの活用は、スポーツスポンサーシップの未来を創造していく上で、重要な鍵となるでしょう。
本記事の監修者紹介
池田 聡史
スポーツビジョナリー|代表取締役社長
三井住友銀⾏で法⼈営業を経験した後、外資系および国内の動画・広告領域におけるスタートアップで営業組織の立ち上げやマネジメント業務を学ぶ。その後Jリーグクラブでスポンサーシップセールスを経験。現在はスポーツに特化したマーケティングエージェンシーであるSportVisionary(スポーツビジョナリー)を運営し、企業のスポーツ活用を支援している。AFC(アジアサッカー連盟)が提供するACFAM(フットボール経営管理コース)を受講。アジア地域のスポーツ業界の持続的な成長に貢献するべく起業に至る。
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