
スポーツは、人々を熱狂させ、感動を与える、世界共通のエンターテイメントです。そして、その舞台裏で、企業のマーケティング戦略として欠かせない存在となっているのが「スポンサーシップ」です。企業は、スポーツチームやイベントに資金や商品・サービスを提供することで、ブランドの認知度向上や売上増加など、様々な効果を期待します。
しかし、スポンサーシップは単なる資金提供ではありません。成功のためには、緻密な戦略と、関わる様々な人々との協力が不可欠です。今回は、スポーツスポンサーシップを成功に導く、主要なステークホルダーとその役割について深く掘り下げていきましょう。
スポンサー:スポーツに夢を託す企業たち
スポンサーシップの舞台に立つのは、まずスポンサーである企業です。
彼らは、自社のマーケティング目標を達成するために、スポーツという舞台に投資を行います。その目的は、ブランド認知度の向上、企業イメージの向上、売上増加、顧客ロイヤリティの向上など、多岐にわたります。 スポンサー企業は、その規模や業種も様々です。
地域密着型の小さな商店から、世界を股にかけるグローバル企業まで、あらゆる企業がスポンサーとしてスポーツに関わっています。
近年では、スポーツを通じた社会貢献活動を行う企業も増え、スポンサーシップの目的も多様化しています。 スポンサーは、自社のビジネス戦略に基づいて、どのスポーツプロパティに投資するかを決定します。
例えば、若年層をターゲットとする企業は人気上昇中のeスポーツチームに、健康志向をアピールしたい企業はマラソン大会に、グローバルなブランドイメージを構築したい企業は国際的なスポーツイベントに、それぞれスポンサーとなるでしょう。
スポーツスポンサーシップの特徴:排他性
スポーツスポンサーシップの特徴の一つに、排他性があります。
高額なスポンサーシップの場合、同業界の他社が参入できないような独占的な権利を得られるケースが多く、強力なマーケティングツールとなりえます。
例えば、オリンピックのスポンサーは非常に分かりやすい例です。消費財ではP&G、時計メーカーはオメガ、カード会社はVISA、自動車はトヨタ、といったように、オリンピックでのスポンサーシップ契約を結ぶことで、ブランドのマーケティング活動を行うことができる独占的な権利を得ているのです。
スポーツプロパティ
舞台を彩る個性豊かな顔ぶれ スポンサーシップのもう一方の主役は、スポーツプロパティです。
これは、スポンサーから資金提供を受ける側のことで、プロスポーツチーム、アマチュアスポーツ団体、アスリート、イベント主催者など、様々な形態があります。
スポーツプロパティは、スポンサーに魅力的な舞台を提供することで、その投資に見合う価値を提供する必要があります。観客動員数、メディア露出、ファン層、社会的な影響力など、様々な要素がプロパティの価値を左右します。
世界的なスポーツイベントであるFIFAワールドカップやオリンピックは、莫大な視聴者数を誇り、グローバルなブランド認知度向上に貢献します。
一方で、地域密着型のスポーツチームは、地域社会への貢献や、熱心なファンとの繋がりを重視するスポンサーにとって魅力的な存在となります。 近年では、eスポーツも新たなスポーツプロパティとして注目を集めています。若い世代を中心に人気が急上昇しており、多くの企業がスポンサーとして参入しています。
スポーツプロパティの種類
スポーツスポンサーシップにおいて、スポンサー企業が資金提供を行う対象となるのがスポーツプロパティです。
これは、プロ・アマチュアを問わず、様々なスポーツ団体、チーム、アスリート、イベント、施設などを指します。スポーツプロパティは、それぞれ独自の特性と魅力を持ち、スポンサーに多様なマーケティング機会を提供します。
スポーツプロパティは、大きく以下の6つのカテゴリーに分類できます。
統括団体
FIFA(国際サッカー連盟)やIOC(国際オリンピック委員会)など、スポーツ全体を統括する団体です。これらの団体は、世界的な規模で競技を運営し、莫大な数のファンを擁しています。
そのため、グローバルなブランド認知度向上を目指すスポンサーにとって、非常に魅力的な存在です。 FIFAワールドカップやオリンピックといった世界的なイベントにスポンサーとして参加することで、企業は世界中の視聴者にブランドをアピールすることができます。また、これらの団体が推進する社会貢献活動に協力することで、企業イメージの向上にも繋がるでしょう。
リーグ
JリーグやBリーグ、プレミアリーグなど、複数のチームが参加するリーグ戦です。
リーグスポンサーシップは、特定のチームだけでなく、リーグ全体を支援することで、幅広いファン層にアプローチできる点が魅力です。 リーグの冠スポンサーとなることで、大会名に企業名を含めることができます。
例えば、「明治安田生命Jリーグ」のように、リーグ名と一体化した形でブランドを露出させることが可能です。また、リーグ戦の試合会場や中継映像に広告を掲載することで、高い広告効果を得られるでしょう。
チーム・クラブ
プロレベルからアマチュアレベルまで、様々なチーム・クラブがスポンサーシップの対象となります。地域密着型のチームを支援することで、地域社会への貢献をアピールしたり、熱心なファンとの繋がりを深めたりすることができます。
チームスポンサーシップでは、ユニフォームにロゴを掲載することが一般的です。選手の着用するユニフォームは、常にメディアに露出するため、高い広告効果が期待できます。
また、チームのホームスタジアムでの広告掲載や、ファン向けのイベント開催など、様々なアクティベーション活動を行うことも可能です。
アスリート
プロからユースレベルまで、あらゆるレベルのアスリートがスポンサーシップの対象となります。近年では、アスリートと契約し、個人を支援する企業が増えています。
特に、ゴルフやテニスといった個人スポーツでは、アスリートスポンサーシップが盛んです。トップアスリートは、世界中で高い人気と知名度を誇り、彼らの活躍はメディアで大きく取り上げられます。そのため、企業は、アスリートのイメージと自社のブランドイメージを重ね合わせることで、効果的なマーケティング活動を行うことができます。
また、近年では、メジャーリーガーなど、チームスポーツの著名選手にスポンサーが付くケースも増えています。これは、SNSの普及により、著名選手が自身のメディアを持つようになり、ファンとの直接的な繋がりを作りやすくなったことが背景にあります。
施設 スタジアム
アリーナ、トレーニングセンターなどのスポーツ施設も、スポンサーシップの対象となります。施設スポンサーシップは、日本でも多くの事例があります。
施設のネーミングライツを取得することで、施設名に企業名を含めることができます。例えば、「味の素スタジアム」や「楽天モバイルパーク宮城」のように、施設名と一体化した形でブランドを露出させることが可能です。また、施設内に広告を掲載したり、イベントを開催したりすることもできます。
さらに、施設内の特定の部屋や場所にスポンサーシップの権利を付与するケースもあります。例えば、プールやエントランスラウンジなどに企業名を冠したり、ロゴを掲出したりすることで、特定のエリアに焦点を当てたマーケティング活動を行うことができます。
プロ野球のソフトバンクホークスでは、入場ゲートにコカ・コーラやみずほ銀行のブランドカラー・ロゴを掲出し、入場ゲートのスポンサーシップを提供しています。
イベント
スポーツイベントも、重要なスポンサーシップの対象です。小さな地域のイベントから、オリンピックのような世界的なメガイベントまで、様々な規模のイベントがあります。
マラソン大会や地域のスポーツフェスティバルなど、地域密着型のイベントにスポンサーとして参加することで、地域社会への貢献をアピールすることができます。また、世界的なスポーツイベントにスポンサーとして参加することで、グローバルなブランド認知度向上を目指すことができます。
このように、スポーツプロパティは多種多様であり、それぞれ異なる特性と魅力を持っています。スポンサー企業は、自社のマーケティング目標やターゲット層、ブランドイメージなどを考慮し、最適なスポーツプロパティを選定する必要があります。
エージェンシー
スポンサーシップを成功に導く黒子たち
スポーツスポンサーシップにおいて、表舞台に立つスポンサーとスポーツプロパティを陰ながら支え、成功へと導く存在、それがエージェンシーです。
エージェンシーとは、スポンサーやスポーツプロパティに代わり、スポンサーシップに関する様々な業務を代行する専門企業です。広告代理店やマーケティング代理店が担う場合もありますが、近年では、スポーツスポンサーシップに特化したエージェンシーが増加傾向にあります。その規模も、世界中に拠点を持ち数千人規模の従業員を抱える大企業から、個人経営の小さな会社まで様々です。
エージェンシーの役割
エージェンシーは、スポーツスポンサーシップにおいて、スポンサーとスポーツプロパティの双方を支援し、成功へと導く役割を担います。その役割は多岐にわたり、クライアントのニーズや契約内容に応じて柔軟に対応します。
大きく分けると、エージェンシーには2つの役割があります。 1つ目は、包括的なサポートです。ブランドまたはプロパティのスポンサーシップ業務全般を請け負い、戦略策定から実行、評価までを一貫して支援します。いわば、スポンサーシップの専門家チームとして、クライアントに寄り添いながら、成功へと導きます。
2つ目は、特定の業務の代行です。スポンサーシップに関する個別の業務を、クライアントに代わって遂行します。例えば、
・スポンサーシップ対象となるプロパティの価値を、データに基づいて客観的に評価します。
・スポンサーのマーケティング目標達成のための最適な戦略を立案します。
・スポンサーシップの効果を測定し、改善点を提案します。
・スポンサーシップに関連する広告やコンテンツの企画・制作を行います。
・ スポンサーシップの効果を最大化するためのイベントやキャンペーンを企画・実行します。
近年では、スポーツビジネスの専門知識や豊富な経験を持つエージェンシーが増えており、スポンサーシップを成功させるための重要なパートナーとして、その存在感を増しています。
日本におけるエージェンシー活用
日本では、欧米に比べてスポーツエージェンシーの活用が遅れていると言われています。しかし、近年では、スポーツビジネスの成長に伴い、エージェンシーの需要は高まりつつあります。
プロパティ側のメリット
効率的なスポンサー獲得:エージェンシーは、幅広いネットワークを活かして、最適なスポンサー候補を紹介することができます。
効果的なアクティベーション:専門的な知識やノウハウを持つエージェンシーは、スポンサーシップの効果を最大化するためのアクティベーション活動を支援します。
新たなビジネスモデル開発:他のスポーツ業界の事例を参考に、新たな商品開発や収益化のアイデアを提供することができます。
人材不足の解消:スポンサーシップ業務に精通した人材を確保することが難しい場合、エージェンシーにアウトソーシングすることで、業務効率化を図ることができます。
ブランド側のメリット
客観的な視点からの評価:エージェンシーは、スポンサーシップの効果を客観的に評価し、改善点を提案することで、投資対効果の向上に貢献します。
最適なアクティベーション戦略:契約で得られた権利を最大限に活用するための、効果的なアクティベーション戦略を立案・実行します。
専門知識・ノウハウの活用:スポンサーシップに関する専門知識やノウハウを活用することで、リスクを最小限に抑え、成功へと導きます。
まとめ:三位一体で築く、スポーツスポンサーシップの未来
スポーツスポンサーシップは、スポーツ界の発展と企業の成長を繋ぐ、重要な架け橋です。しかし、その成功は、一筋縄ではいきません。
スポンサー、スポーツプロパティ、エージェンシー。それぞれのステークホルダーが、自らの役割を深く理解し、互いに協力し合うことで、初めて大きな成果を生み出すことができます。
スポンサーは、明確な目標と戦略を持って、スポーツという舞台に投資を行う必要があります。スポーツプロパティは、魅力的なコンテンツを提供し、ファンを魅了する舞台を創り上げなければなりません。そして、エージェンシーは、両者の橋渡し役として、専門的な知識やノウハウを駆使し、最適なマッチングを実現する必要があります。
三位一体となった時、スポーツスポンサーシップは、単なる資金提供を超えた、真のパートナーシップへと進化します。それは、スポーツ界全体の発展に貢献するだけでなく、企業のブランド価値向上、顧客とのエンゲージメント強化、そして新たなビジネスチャンスの創出にも繋がるでしょう。
スポーツの持つ無限の可能性を、ビジネスの成功へと繋げるために。 三位一体の力で、スポーツスポンサーシップの新たな未来を創造しましょう。
本記事の監修者紹介
池田 聡史
スポーツビジョナリー|代表取締役社長
三井住友銀⾏で法⼈営業を経験した後、外資系および国内の動画・広告領域におけるスタートアップで営業組織の立ち上げやマネジメント業務を学ぶ。その後Jリーグクラブでスポンサーシップセールスを経験。現在はスポーツに特化したマーケティングエージェンシーであるSportVisionary(スポーツビジョナリー)を運営し、企業のスポーツ活用を支援している。AFC(アジアサッカー連盟)が提供するACFAM(フットボール経営管理コース)を受講。アジア地域のスポーツ業界の持続的な成長に貢献するべく、起業に至る。
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